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Someone who fills the void with light.
光を満たす − 熊谷 峻

14 May 2021

Someone who fills the void with light.

 いつの時代、どこの国のものともつかない骨董品のような壺や盃。エキゾチックな佇まいの分厚いガラスが鈍い光を湛える姿に、国境を越え、人々が惹きつけられる。「作ることは祈ることに似ている」と話すグラスアーティスト・熊谷 峻は秋田県出身。冬には豪雪となる東北の、薄曇った空の中性的な美しさと、作品の持つ雰囲気とが重なる。

Photo: Masashi Kuromoto (STUDIO crossing)
Interview, Edit: Misa Kuromoto

 熊谷峻のスタジオは、彼の故郷である秋田県秋田市、駅からほど近い住宅街の一角にある。同じくガラス作家である妻の境田さんとシェアするスタジオは、季節の草木が目に楽しい庭に面し、自然光の美しいガラス張りの空間だ。ここで日々の制作は行われる。



 彼の作品は、蝋で作った形を石膏型に起こし、そこにガラスを溶かし入れる鋳造という手法で製作される。手捻りで作られる形はどこか歪で、それが不思議な存在感を生み出している。古道具や骨董品、文献などからインスパイアされることも多いという作品は、さまざまな国の古いものを少しづつ混ぜ合わせたような形をしている。


 1000℃の窯の中で起こるガラスの対流や変化が、陶芸の窯変のように作品に表情を生み出す。ガラスを技術的にコントロールしながら、土と金属で自分自身も予期せぬ変化やアクセントを与えているという作品は、主材となるさまざまな色のガラス片と、表面に焼き付けられた土、金属反応で生まれる色の重なりが、作品に美しい複雑さを与えている。その姿はどこかでみたことのあるような古いものを彷彿とさせながらも、現代的で、初めて目にするという感覚を覚える人が多いだろう。


 型の中の空洞に満たされたガラスの光。熊谷はそれを「喜び」のようなものだと言う。大小の壺や盃それぞれに、希望や意志のような精神的美しさを感じるのは、それが「満たされたもの」だからかもしれない。

作品ページを見る
Artist Profile
熊谷 峻
秋田|ガラス

1983年 秋田県生まれ。2006年 秋田でガラスを学ぶ。2012-2016年 富山ガラス工房所属。2017年 秋田に戻り制作を行う。ガラス鋳造の技法を展開させ、主に器や像を制作。熊谷峻の作品は、蝋で作った形を石膏型に起こし、そこにガラスを溶かし入れる鋳造という手法で製作される。1000℃の窯の中で起こるガラスの対流や変化は陶芸の窯変のようなもので、コントロールできない想定外の部分に依るものがある。厚く流し込まれたガラスは光を溜めて、表面に焼き付けられた土や流し込まれた金属と重なりながら複雑な景色を作り出し、その姿は古代ガラスや廃墟を想わせると同時に、新たな光や希望を湛えている。GALLERY crossingでの主な個展:2019年「祈りの痕跡」、2020年「Vessels Brimming with Light. 光を湛える壺」。

Artist Profile
Shun Kumagai
Japan|glass

He was born in Akita, Japan, in 1983. After completion of his degree in glass in Akita, he worked with glass in Toyama for 5 years. Hemoved his base to Akita in 2017 and currently works in his own glass studio. Bright scenery at the end of a prayer. His work is created by first making a prototype with wax, then using that to make a mold out of gypsum, and finally pouring cast glass onto the mold. The convection current and changes to the glass inside the kiln cannot be controlled and forms the element of surprise. The thick layer of glass poured onto the mold stores the light and mix with the clay glazed on the surface and the metal poured into it to form a complex scenery. While it is reminiscent of ancient glass and ruins, it is also full of new light and hope. 

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