カート
Shop now
ログイン
See more

Someone who crafts "qualia".
クオリアをつくる − 林 亜希子

21 September 2020

Someone who crafts "qualia".

 グラススタジオ「qualia-glassworks」。"クオリア"という聞き慣れない単語は、日本語にすると"感覚質"と訳されるもので、私たちが心の中で感じる質のことを表す脳科学用語だ。なんとなく良い感じ、夕焼けの赤いの感じ、風が頬を撫でる感じ、そういった質感を表す言葉がクオリア。ガラス作家・林 亜希子が目指すのは、そんな「ちょうどいい感じ」を体感させるもの。作品を手に取り、日々の暮らしの中で使ってこそ実感できる魅力は、小さなグラスひとつから少しづつ拡がり、毎年ファンの数を増やしている。

Photographer: Masashi Kuromoto(STUDIO crossing)
Interview, Edit: Misa Kuromoto

 「qualia-glassworks」は、岐阜県美濃加茂市・私たちのギャラリーからほど近い、住宅街の一角の静かなエリアにある。インダストリアルな印象の工房兼住居は二階建てで、庭に面した一階がスタジオになっている。作業場には自作の道具や作業台が並び、様々な形をした鉄製の道具類、床を這うオレンジ色のコード、業務用の扇風機など、置かれているものはどれもこざっぱりと無骨なデザイン。一年中ガラスを溶かし続けているというアメリカ製の溶解炉は大きく、たくさんの量を生産することができる。

 高温の炉で溶かされたガラスを竿に巻きつけ、息を吹き込み、成形する。柔らかい素材がみるみる形を変え、全身を使いリズミカルに作られていく工程は見ていて飽きない。彼女の作るものは、シンプルで飾らないものばかりだが、ごまかしの効かない技術と精度が必要なものだ。

 作品のラインアップは、独立当初からあまり変化がない。そのことについてたずねると、たくさんの種類を作るよりも、良いと思うものができたら、それをどんどん作り重ねていくのが自分のやり方だと言う。同じ作業を重ねる中で、ここをほんの少し薄くするとか、広くするとか、もっとシャープにするともっと良くなる、そういうことを繰り返す方が、種類を増やすことよりも大事だと考えている、と。そう聞いて、この、非常に地味なものづくりの姿勢こそが、作品に宿る「クオリア」の核であることに気がついた。色や形を大きく変化させるのではなく、毎日制作を重ねる中で加えられる微々たる変更点の重なりが、最終的な印象の明らかな違いにつながっている。

 一見プロダクトの様な均一さを持ちながら、手吹きガラス特有の柔らかな質感や、光の揺らぎ、不均等な美しさを魅せる作品。朝起きて、コップ一杯の水を飲むとき、その瞬間にささやかな美しさを添えてくれる。それは決して大きな声では主張しないけれど、使えばわかる、暮らしの中で定番になってゆく感じ。それが林 亜希子の目指す「ちょうどいい感じ」というクオリアなのだ。

作品ページを見る
Artist Profile
林 亜希子
岐阜|ガラス

1997年〜2002年 大阪府大阪市 旭硝子製作所勤務。 2002年〜2008年 大阪府和泉市 fresco勤務。2010年より岐阜県美濃加茂市にガラス工房を構え qualia-glassworks(クオリアグラスワークス)として制作活動を行う。GALLERY crossingでは毎年冬に新作発表を兼ねた展示会を開催。定番のグラスやプレートなどのうつわをはじめ、ペンダントライト、スタンドライトなどの照明作品も手がけている。

Artist Profile
Akiko Hayashi
Japan|Glass

She worked in Asahi Glass and fresco studio in Osaka, She will hold and produce a studio in Minokamo, Gifu Prefecture, in 2010. These peaceful looking glass items were made with the glass-blowing method. These beautiful fixtures born from reliable skills fostered through practice and a delicate aesthetic will harmonizw with your living space and bring a beautiful feeling of translucency to your life.

  • Ja
  • En