People living happily together with earth and fire.

People living happily together with earth and fire.





 やきものをはじめてから20年余になるという渡辺の、近年のものづくりは、土を掘り、薪を燃やし、陶器を作ることにとどまらない。身近な草花や、灰、松脂などをも素材とし、地球のかたちそのものを写すようなアートピースも最近の彼の作品である。それらは一見別の仕事のようにも見えるが、しかし、話を聞けば出発点はやはり土にあるのは興味深い。「植物って、土から生えた、テンポラリーな、一瞬の出来事でしょ。だけどいろんな色があって、いろんな繊維や特性があって。これを全部煮て、見える状にして並べると違いが出るんですよ。ずっとやってる"やきもの"と全く一緒で。」と彼は言う。 



 彼のつくる「うつわ」の制作方法は、いたって原始的で、しかし新しさを感じさせる。自然の石を砂に推し当てた凹みをうつわの型にする。そこにそっと泥を流し、焼いたもの。それは単に石のかたちのコピーとも言える、イメージの具体化ではないうつわ。「両手をすくうように合わせる動作の、自然なうつわの概念をかたちにできたら」と話す渡辺 隆之。はじめは海の砂浜でつくったというそのうつわは、飾らない、葉っぱのお皿のような存在感で、さっと茹でた菜葉や焼いただけの食材が居心地よく映える。実に無理なく、日常に寄り添う、ケの日のうつわだ。




 土器からはじまったやきもの。長い歴史の中で様々な用途・技術が生まれ、多種多様な美しさが存在する現代。陶芸と出会い、陶芸家・黒田 泰蔵氏の元で働き、アジア各国を巡り、やきものとその生活文化を見てきた彼が、今いる場所でつくる「うつわ」。それはそのまま、彼の人柄と暮らしをうつした姿である。

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